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2011年02月15日
二年に一度フランスで開催される総革製本の国際コンクールに作品を出品することになりました。

現在、アトリエに通って総革製本を制作中です。
これは9月にフランスで開かれる国際革製本コンクール
http://www.biennales-reliure.org/
に出品するための作品です。

--以下ブログより引用--
わたくし樋口薫は、この度、2年に一度フランスで開催される総革製本の国際コンクールに作品を出品することになりました。
このコンクールは懐が深いというか、芸術は皆のモノ!といったおおらかな体制で、わたしのような初心者でもエントリーは可能なのです。
毎回、本の中身を大会側が決定するだけ。
世界中に散らばる出品者達は、題材のタイトルなどからイメージをふくらませ、自由に制作に取り掛かります。

前置きはさておき、さっそくアトリエに籠もります。
100行程以上あるルリユールに初挑戦です。
不器用で芸術的センスに恵まれているとは言い難い私にもできるのだろうか・・・。
不安と期待を胸にアトリエに向かいます。

フランスから届いた茶色いボール紙の箱を開けると、大会側から規約事項を記した手紙と一緒に真っ白い紙の束が出てきました。二つ折りの紙の束は糸などで一切綴じてありません。
素っ裸の状態です。

01革製本_アトリエ

02革製本_アトリエ

この素っ裸のページを一枚一枚手で折り、へらで折り目をしっかりつけます。
若い紙は元の自由な姿に戻ろうと必死の抵抗を試みますが、プレスに掛けられてやっと観念した様子です。
紙を二つ折りにした状態の物を折丁(おりちょう)と呼びます。
折丁が新しい紙であるほど、元に戻ろうとする力が強いため、必ず数日置きます。

プレス機に入れたお陰で折丁の両端が同じ厚みになりました。

この後、プレス機から出した折丁をひとつひとつ重ねて針と麻糸で縫いつけて行きます。

03革製本_アトリエ

04革製本_アトリエ

折丁になっていない1枚の紙(ペラ)を綴じこむ際は、縦長に切った和紙を糊付けし、折丁に巻き込む形で貼り付けます。
写真の紳士は今回の題材である「ラ・フォンテェーヌ」の肖像画。
このような方法で、本の見開きに作者の肖像画や写真、直筆の署名などのページを加える事ができます。

05革製本_アトリエ

06革製本_アトリエ

さて、これから続く製本作業は、機械も少し使いますが、ほとんどが手仕事。
両手を綺麗に保ちながら、心を落ち着けて取り組みます。
まず、本の背に当たる部分に印を書きました。
ここは革でかくれてしまう部分だから書き込んでも大丈夫。
作業中に、前後左右を確認するためにその都度本を手で開いていたら、本が傷んでしまいます。
開かずに分かるよう、この段階で印を付けるのです。

折丁の背の側に、のこぎりで切れ目を入れることを目引きといいます。
目引きの場所に印しを付けます。

07革製本_アトリエ

08革製本_アトリエ

のこぎりで麻糸を通す穴を作りますが、溝が深すぎると本を開いたとき綴じ糸が浮き美しくありません。浅く均等にのこぎりを引きます。
やり直しが効かない作業です。慎重に行います。

背綴じひもを本の目引き穴の位置に合わせて固定し、かがる準備をします。
背綴じひもは後で表紙を貫通して本全体の強度を保つ重要な役割を果たします。

10革製本_アトリエ

かがっている間に折丁が前後に動かないように、時折、木材で叩きながら、両手をバランスよく使い、背綴じひもごとかがります。
等しくテンションがかかっているかは麻糸を爪ではじく音で確認します。
不器用なわたしでもご覧の通り。
この道30年の職人である先生がコツを教えてくれます。
静かなアトリエ。心をひとつにして本と向き合う時間は、日常の喧噪からは遠い異空間。

真っ直ぐに揃えるって何て気持ちがいいのでしょう!
3時間ほどでちゃんとかがる事ができました。

三方化粧カットと呼ばれる作業に入ります。
全ての折丁をかがり終わりましたら、寸法を控え、裁断機にかけます。

11革製本_アトリエ

12革製本_アトリエ

とても綺麗にカット出来ました。
もう、パラパラめくっても大丈夫です。

この後、丸みだしと呼ばれる作業で、本の背に丸みを出します。
本を持って寝かせて両手で1/3引っ張ります。
もったいつけるように、じわじわと。
ひっくり返して、今度は1/2、同じく、じわじわ。
苦労の割に、あまり綺麗に仕上がりませんでした。
見かねた先生が仕上げて下さいました。

バッキングと呼ばれる作業に入ります。
折丁を正しい位置に固定し、金槌を使って本の背を中央から端の方に倒してゆきます。
全身の体重を掛けながら行う、大工仕事のような行程です。
中世の時代、製本家の多くが男性であったというのが納得出来る力のいる仕事です。
最後に優しく叩いて形を整えます。

13革製本_アトリエ

14革製本_アトリエ

16革製本_アトリエ

背固めと呼ばれる作業に入ります。
膠(にかわ)を鍋にかけて溶かします。寒冷紗(かんれいしゃ)と呼ばれるガーゼ状の繊維を本の背に置き、膠をはけで塗り込み、指で押し込むように塗り込めて行きます。
ダマなった膠が、ゼラチン状に指にくっつきます。
1日目はここまで。
一晩乾燥させれば、背はがっちり固まります。


2日目の朝、アトリエに到着。
両腕と背中、腰が筋肉痛です。手の平の筋肉や、指の関節も疲れているようです。
普段いかに手指を使っていないか痛感します。

「今日は繊細な作業をします」と先生。
トランシュフィルと呼ばれる花ぎれを編む作業に入ります。
布をただ貼り付けたような安価な品に見られる方法ではなく、フランス伝統製本にしたがい、2段に重ねた細い紙の芯に、絹糸を指で編み込んで行きます。
この写真は練習用の花ぎれ編みキットです。実際の数十倍の大きさです。

17革製本_アトリエ

絹糸にはアイロンを掛けて、クセを取っておきます。

18革製本_アトリエ

本と花ぎれは一体化しており、装飾的な意味合いだけでなく、長年の使用に耐えるよう、本の一番弱い部分を補強するためのものです。3段を一度に編みます。
最初に絹糸を針で本に通し、ボンドで固定。

19革製本_アトリエ

先生がスイスイ編んで行きます。
今回は4色の絹糸を私が選びました。
革の色と、見返しのマーブル紙の色と合わせ、組み合わせを考えます。
オレンジ2回、ブルー4回、パープル2回、紺1回のパターンに決定。
紺1回の時、本の背に向かって針を差し込みます。
編み終えたら花ぎれを切らぬよう良く目で見て、両端をはさみでカット。

さて、繊細な作業の次は力仕事です。
ボードの3方向をカッターで削いだあと、ボードを持って外に出ます。

このボードはフランスの製本専門店で購入した中性紙です。
100年経過しても粉々にならない上質なものです。

外の机でボードにヤスリを掛けます。青い粉が一杯出ました。
三方向にヤスリをかけて薄く仕上げるのは、革を貼るときなめらかに傾斜がついていた方が美からです。

20革製本_アトリエ

革表紙の芯となるボードを本に付けます。
きりで45度の方向に穴を5個開けます。背綴じひもの数と同じです。
背綴じひもは麻ひもです。この先に水を付けて固め穴に通します。
この段階では背綴じひもだけでボードとつながっているため、不安定です。

21革製本_アトリエ

ボード(カルトン)に斜め45度を保ち、穴をあけて、背綴じひもを貫通(パッセ)させます。この本の製法をパッセ・カルトンと呼ぶ由来です。
本と表紙ボードがしっかりとつながり、たとえ表紙だけを手に持ってブラブラしても、ちぎれません。

今日の作業はここまで。
新幹線で東京に向かいます。

この後、製本用の山羊革を貼り付けて行きます。
ここで使用する革は、本のサイズや重さから一番適切な厚みにすいてあることが重要で、すいた後も磨き上げたり寝かしたりといった時間を必要とします。この下準備だけでも1ヶ月ほど時間を要します。

そしてタイトルの箔押しを施して完成となります。
イメージ写真はパリのアトリエの作品です。

22革製本_アトリエ

23革製本_アトリエ

本の保存に大敵の湿気、紫外線による革の劣化を防ぐために、ケースも一緒に作ります(時間と体力が残っていれば)。

これら全ての行程を経ると1冊の総革製本が仕上がるのに最低でも2ヶ月は必要となります。
同じ本を複数製本する場合、革は自然のものであるため、その色合いや風合いがひとつひとつ異なります。そのような革の持つ特性をも楽しんで頂ければ幸いです。


ヴァンビー代表 樋口薫ブログはこちらから
国際革製本コンクール公式サイトはこちらから

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